10月は衣替えの季節です。僧侶の世界は ” 和服 ” が中心です。僧服は種類も限られてますので 暑さ寒さに関係なく、浄土宗では 一斉に6月1日から夏衣、10月1日から冬衣への衣替えと定められています。
昔の日本人の着衣は 晴着、普段着、仕事着の三つを用意していたと言います。このうち晴着と普段着が、上下が一つにつながったものを帯で結ぶという、いわゆる着物(和服)に相当するものですが、これらは作業をする時のものではありませんから、機能性はあまり重要ではありませんでした。一方、仕事着のほうは、機能性を重視して上下を分離し、上半身には腰までの丈の短い服、そして下半身にはズボン状の服(作務衣、もんぺ、袴)という組み合わせをしていました。
なぜ昔は 洋服のようなものが発明されなかったのでしょうか。その一つに素材の問題があります。Tシャツや短パン等の 身体に密着した衣類を作るには、容易に屈曲、伸縮する柔軟な素材が必要ですが、日本でこれが可能になったのは、江戸時代に入って木綿が大量に生産されるようになってからのことです。それまで絹は 庶民には手が届きませんでしたから、衣服の素材といえば 麻が主体の植物繊維が利用されていました。これらの素材は 肌に密着するには硬すぎますから、Tシャツや短パンのような衣類を作ることは困難でした。その代わり 仕事着が発明され、身体にまとわりつくようなこともなく、仕事着として適切であったと考えられます。
時代の流れと共に、服装も変化するんですね。” 温故知新 ” の精神で、古きものの良さが伝えていければと存じます。和服も堅苦しいものばかりでなく、和洋折衷に対応できる ” 粋 ” なものへと進化しています。人時所に合わせて着こなすと楽しいですよ。合掌