回番御忌(かいばんぎょき)

皆様のお陰をもちまして、法然上人「回番御忌」の担当寺院を無事に勤めることができました。本堂での私の挨拶を掲載し、有縁方々への御礼に代えさせていただきます。合掌

本日は、新年度 ご多用の中、部内寺院の御住職さま、ご随喜ありがとうございます。また、各ご寺院の役員さま、そして、有縁の参詣者の方々、ようこそ西願寺へお参り下さいました。遠くは、静岡県の藤枝から参詣下さった一般の方々(7名)もあります。法然上人のお言葉に「念仏の声する所が、我が遺跡である(念仏の声がする所に私はいます)」とあります。本堂に参詣人がいっぱいで、中に入れない方もございますが、老若男女・遠近問わず、お集まり下さった方々の大きな念仏の声に、法然上人も さぞお悦びのことと存じます。

さて、法然上人の年忌法要のことを「御忌」と言いますが、それを近江八幡市内12ヶ寺の浄土宗寺院で、毎年「回番」していくので「回番御忌」と申しております。今回は3巡目の3番目の当番。もしかしたら、平成最後の「回番御忌」かもしれません。諸先輩方にお聞きしますと、この法要は当山の先々代(定雄)が長老格であった頃、西光寺様のご先代と提案をし、今に到っているとお聞きしました。実は本日、4月21日は両上人のご命日に当たります。西光寺の先代さまは丁度3年前、定雄におきましては17回忌の当日になります。本日の雲一つない晴天から、お二人の喜んでおられる顔が思い浮かびます。

私自身、西願寺での「回番御忌」は3回とも出勤しております。1回目(平成5年)は10代の頃、先々代の定雄の「先進」として … 2回目の前回(平成17年)は30成り立ての頃、先日3回忌を迎えた先代・邦雄が導師を勤めましたが、その後「琵琶説教」をさせていただき … そして今回は43才(法然上人のお悟りの年になりましたが)、「導師」として … 阿弥陀さまの一番近いところに座らせていただきました。だんだん景色が変わってきて、「回番御忌」と共に育てられてる気が致します。これまでで特に印象に残っているのが、一番初めの「回番御忌」の定雄の挨拶であります。こんな内容でした。

1年先のことを考えるなら種を播け。
10年先のことを考えるなら木を植えよ。
100年先のことを考えるなら人を育てよ。
人生には様々な苦難困難があると思いますが、「回番御忌」と共に、近江八幡の寺院が興隆していくことを切に望みます・・・。

その時は、何気なく聞いておりましたが、今になると、しみじみ、なるほどなぁ … と思います。私は住職になって10年になりますが、それは名ばかりで、先代やその弟子に任せっきりで、私は他所での布教に精を出しておりました。それは、昔から西願寺に2、3人の僧侶が常住していたので出来たことですが … 先代が病に倒れ、一年の闘病生活の後 往生し、やっとお寺に馴染んできた弟子が 師匠の一周忌を待たず、他寺と縁を作って巣立ち、西願寺を護る相談相手(僧侶)がなくなる状況を強いられました。世の無常(無情)を感じた1年半でした。布教活動、勤め、西願寺の住職 … どれも大事ですが、正直、私の身体は一つであります。しかも待ったなし … 直面した現実に 様々な方の人間性を見ることができました。人の救われ方は色々ですが、やはり仏教は ” 和を以て貴し ” … 人々の心に寄り添った ” 抜苦与楽 ” の精神こそが本当に有難く、真の救いだと学びました。それは 相手の話を丁寧に聞いて、粘り強く応対できる、ジワ~っとした優しさです。偉くなったと錯覚して、善魔になってはいけないのです。その謙虚なあり方が仏教であり、僧侶のあり方です。考えて見れば、先代や先々代はそういう人格の持ち主でした。

そこで私は、不義理をせぬよう、他に恩のある方々との兼ね合いを考えつつ、焦らず、一歩づつ歩むことにしたのです。そんな時、助けられたのが、檀家の熱意と、間際に迫った「回番御忌」の行事でした。まず、歴代総代6名に回番御忌の準備委員会を発足をお願いし、当時の役員様と共々に 一から寺を見つめ直す時間を作っていただのです。月一回の集まりの元、忌憚のない議論をかわし、寺の大掃除をしたり、予算に合わせた修復プランをたてて頂いたり … 今の時代に合った「回番御忌」にしようと、皆が一体となって今日を迎えさせていただきました。

それと同時に、他所での布教の種が開花し始めました。外部の方から本堂の畳替えのご寄進を頂いたり、藤枝の方々から大きなお力添えをいただいたり・・・将来の西願寺の土台が「回番御忌」と共にできました。さらに、この法要が近づくにつれ檀家の意識が高まり、有志の方々や尼講さんが、声を掛け合って掃除や草引きをしに来て下さったり、詠讃会のご婦人方が御詠歌の練習に精を出して下さったり・・・檀信徒と歩む・・・今、何にも代えがたい悦びを味わっております。

また、僧侶が独りなったと申しましたが、その間、息子二人が得度を受け、日頃の法事も手伝ってくれるようにまでなりました。本日は、そんな長男二男が私の脇を固めてくれ、また巣立った菊田水月尼も維那を勤めてくれて・・・ ” 西願寺に育てて頂いた者達 ” が法要の肝を勤め、皆様をお迎えさせていただきました。人を育てることに精を出した、本日17回忌の定雄和尚。そして、祖母のせつ。先代の邦雄和尚。西願寺を護って下さった歴代上人、檀信徒の方々に、少しでも恩返しができればと思い、法要においては、住職のプライドを持って勤めさせていただきました。

1年先のことを考えるなら種を播け。
10年先のことを考えるなら木を植えよ。
100年先のことを考えるなら人を育てよ。

ただ、この檀家の団結は、先々代や先代が播いた布教の種が、今、花咲いてるのであります。決して私の力ではありません。おごらぬように、謙虚に、1年先、10年先、100年先の人を育てられるような布教の種播きをさせていければと存じます。第4巡目の「回番御忌」にも本堂いっぱいの方が集まるよう、市内のご寺院さまと共に手を取り合い、精進していく所存であります。本当に皆様、ようお参り下さいました。すべての皆様に感謝の心を捧げます。ありがとうございました。同唱十念

撮影・杉山稔氏

前日に引き続き、当日は朝9時から準備を開始しました。翌日の後片付けを含め、3日間、雲一つない快晴に恵まれました。

受付

本堂いっぱいの方にお集まり下さいました。

内陣の奥は詠讃会。手前が尼講。

各ご寺院一同にそろわれての法要は、大変厳かでした。

部長の正栄寺・山梶賢昭上人のご挨拶

尼僧と縁を結ばれ、新師匠となられた寶泉寺・池上良慶上人の説教

中嶋光政回番御忌実行委員長(右)と伴與四郎総代(左)の挨拶

各ご寺院住職と役員による懇親会

懇親会接待の後、身内での打ち上げ。盛り上がりました!

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