日の暮れが早くなり、秋の気配が深まって参りました。この時期はお寺の行事が多く、色々な所へ琵琶説教のお招きを受けます。そんな中、秋のお彼岸から半月ごとに伺っている地域があります。それは山口県の周防大島(すおうおおしま)。最近、何かと話題の地域です。ご存じでしょうか?
今年の8月に 2歳の藤本理稀(よしき)ちゃんの行方不明で全国に大々的に報道され、9月には大阪の警察署から逃げ出した樋田淳也(ひだ じゅんや)容疑者が、道の駅に約一週間滞在したということで話題になり、極めつけが、10月22日の貨物船衝突による大島大橋の通行止めと島全体の断水・・・ニュースで見ない日はないくらい有名な島となりました。実は 昨日まで行って来ました。
本来は11月1日~5日まで、五日間のお寺の法要のご依頼で、私は その間に8講演をする予定でしたが、事故の影響で 4、5日の二日間で3講演に短縮されて 再依頼をいただきました。伺った時、本州と結ばれてる橋は何とか通れましたが、島は依然として断水状態でした。飲料水はもちろん、洗濯の水、トイレの水等々、まだ給水車頼みで不便な状態にもかかわらず、寺内の皆様に本当によくしていただき、恐縮至極でした。そんな中、力強く、明るく過ごされてる島民の皆様に、講師の私が勇気をもらいました。
被害に遭われている聴衆を目前にして、なんとお声をかけて良いか解りませんでしたが、弁天さまがフッと浮かび、説教を始めました・・・今年の周防大島は、様々な「水」の被害に苦しんでらっしゃることと存じます。本日からの講演は「琵琶説教」。琵琶と言えば、七福神の弁天さまをイメージされる方が多いと思います。弁才天は、元々、インドの水神・サラスヴァティだと云われます。サラスは「水」を意味し、さらさらと流れる水の音が音楽を奏でる連想から ” 音楽の女神 ” になったのです。それが日本で琵琶を持った弁才天の姿で現されました。弁才天の由来は、流暢に流れる水の音から ” 音楽 ” の他に ” 言葉 ” の神にも見立てられ 「言葉(弁)と才に優れた神」。それが弁才天の名前となり、弁舌、才能(音楽、学芸)の女神として信仰されたのです。この時期に 水神がお持ちの琵琶を聞いて頂くのは、深いご縁だと存じます。そういった思いで この2日間。琵琶に耳を傾けていただき、祈りを捧げる時間がとれれば幸甚です・・・「オン ソラソバテイエイ ソワカ」(弁才天ご真言)。
説教の最後に、良寛さまのお言葉を紹介して終わりました。
災難に逢う時節には災難に逢うがよく候
死ぬ時節には死ぬがよく候
これはこれ災難をのがるる妙法にて候
災難に逢うときは災難に遭い、死ぬときには死ぬしかない。私たちがどんなに手を尽くしてもそれは変えられません。だとしたら、それらを受け入れて生きるしかないという意味の言葉です。どんなに不運が続き、大災害に逢おうとも、それは紛れもない命の現実の姿でしかなく、そのことを「災難」としてしか捉えることができないならば、どこまでもその不運を嘆いて生きていくしかありません。全てを受け入れ、ご縁を大事にすることが 幸せに生きる妙法なんだと思います。
次回は2024年11月。6年後の予約をいただきました。先日買った五年手帳でも追いつきません(笑)。その時には、今回の出来事がよい思い出として島の皆様と話せたらと存じます。合掌
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