人間の五衰

前回のブログで「木の五衰」から因果応報の過程を記しました。今回は「人間の五衰」について、安岡正篤 氏の言葉から学びたいと思います。

「 人間もそうだ。いろいろの欲ばかり出して、すなわち貪欲・多欲になって修養しない。  つまり ” 省 ” しない。そうすると風通しが悪くなる。

つまり心理や教えが耳に入らなくなる。                                                                                            善語・善言を聞くということをしなくなる(「懐(ふところ)の蒸れ」)。
そうすると「裾(すそ)上がり」といって(理性や謙虚さを失い)、
人間がオッチョコチョイになってくる(「末(うら)枯れ」)。
そうするともう進歩は止まってしまう(「末(うら)止まり」)。
すると悪いことばかりに親しむようになる、虫が食うのだ(「虫食い」)。       つまらないやつにとりつかれ、そして没落する。これは「人間の五衰」だ。      だから植物の栽培もこの ” 省 ” という一字に帰する。

「省みる」ということは、別にいえば「省く」ということだ。それによって、人間本来の進歩・向上力が生まれる。すなわち克己(こっき)だ」               (『知命と立命』:「Ⅲ達人の人生哲学」より)

先日、震災被災地に慰問して学んだのが、” 省 く” 大切さ でした。無駄な欲望を省くことによって、人間は 真に豊かな生活ができるのだということを 目の当たりにしました。とりわけ戦後の日本人は、過度な文明至上主義となり、近代化(個人化、効率化、高速化、巨大化)し過ぎたのかもしれません。その結果、経済を抜きにした精神的連帯や、自然や生命の持つリアリティの喜びを暮らしの中で感じられなくなり、かえって無機質的なものになってしまったのではないでしょうか。

豊かな暮らしとは、便利で合理的な「文明」と、特殊で非合理的な「文化」の調和により生まれます。お寺参りは、先人が築きあげた 崇高な「文化」です。ちょうど今月は、ご先祖を迎えるお盆の時期です。これから自分は何を省き、何を得るか。それを考える良い時期です。「人間の五衰」に照らし合わせ、文明と文化の調和のとれた真に豊かな暮らしを 共々に目指していければと存じます。合掌

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