明日は「母の日」です。日頃の感謝を込めて、母親にカーネーションなどの贈り物をする日であります。この由来は、20世紀始めアメリカのアンナという女性が、母の命日に教会で白いカーネーションを霊前に供えて母親を偲んだことが始まりともいわれています。この花言葉は「亡き母を偲ぶ」という意味を持つようで、存命でしたら赤いカーネーションを贈ると花屋さんに教えて頂きました。
佛教には『父母恩重経(ぶもおんじゅうきょう)』というお経があり、様々な親の恩が説かれています。その中の一つに、子供が生まれる時、母が大変な苦しみに耐えて産んでくださったご恩「臨生受苦の恩(りんしょうじゅくのおん)」が説かれています。以下は『とどろき』から学んだことですが、月満ちて陣痛が起こり、子供が生まれる時の苦しみは、青竹を握らせると二つに押し割るほど激しいといい、あぶら汗が流れ、全身がばらばらになるような痛みに耐えて出産する…まさに戦場に臨むような決死の覚悟が必要なので「陣」痛といわれるようです。
そのことから、水戸黄門として有名な水戸光圀公は、自分の誕生日には最も粗末な食事をされたと云われます。「誕生日は、この世に生まれた祝うべき日であるかも知れない。しかし、この日こそ、自分が亡き母上を最も苦しめた日なのだ。それを思うと、珍味ずくめでお祝いなどする気にどうしてもなれぬ。母上を思い、母上のご苦労を思えば、自分はせめて一年中でこの日だけでも粗末な料理で母上のご恩を感謝してみたい」と。
私達が今、幸せに過ごせるのは、母が激しい痛みに耐え、命懸けで産んでくださったからであります。「母の日」は、日頃の感謝を捧げる大切な日ですが、単に「物を贈る日」として形骸化してしまってはもったいないと思います。『父母恩重経』に説かれるような「根元のご恩」を知ることも大事だと思いました。そこから「命の大切さ」や「お陰」という、人間にとって大事なことを学べる日になるのだと思います。合掌
最後に古歌には、次のように詠まれていますのでご紹介します。
「諸人(もろびと)よ 思い知れかし 己(おの)が身の 誕生の日は 母苦難の日」