芒種

本日の暦は「芒種(ぼうしゅ)」です。芒種とは、(のぎ)【穂が出る穀物】のをまくのに適した日をあらわします。ちなみに芒種から5日後を「入梅(にゅうばい)」といい、梅雨入りとなります。しとしとと降り続く長雨が「縁」となり、あらゆる植物をいきいきと生かしてくれる時季であります。

仏教でも「種まきの重要性」が説かれており、それが有名な「因果の道理」(原因結果の法則)であります。これは「幸も不幸も、自分に現れる結果の一切は、自分のまいた種ばかり」ということです。しかし人々は言います。「こんなに頑張っているのに、なぜ報われないの?」と。個々の努力の度合いはわかりませんが、この法則で大事なのは、因果の道理の間には「縁」というものが隠されてることです。「因縁」という言葉があるように、因と縁が合わさって、結果が現れることを知らねばなりません。種が発芽し育つには、日光や土、水などが必要なように、縁なしには、どんな結果も生まれないのと同じであります。

私が奉職しているお寺は、国宝をまつる京都の拝観寺院です。有意義な観光をしてもらうには、寺内の者による説明や見所を聞くか聞かないかでは、楽しみ方が何倍と変わってきます。(もちろん個人で楽しみたい方があるのは承知です)ひとりでも多くの観光客に喜んでもらおうと思うのですが、挨拶を無視されては縁ができず、お声がけすらできません。そういう方に限って、晴れないお顔で帰られるのを目にします。つまり、お寺に来る「因」があっても「縁」がなければ、喜びという「果」に結びつきにくいのであります。

「縁」は、心を開くことから始まると思います。いくら良い種(因)をまいても、自分にだけ都合良く育てたら、偏った花しか咲きません。あえて心を開き、周りから沢山の養分や肥料(縁)をもらうことで、力強い、感動の大輪が咲く(果)のではないでしょうか。

本日の「芒種」は、稲などの【穂が出る穀物】のをまくのに適した日ということで、最後に一句ご紹介します。

実るほど 頭(あたま)の下がる 稲穂かな

稲が実を熟すほど穂が垂れ下がるように、人間も徳が深まるにつれ謙虚になるという真理です。実が熟されたお方は、様々な「縁」に育てられたことに感謝されていることと存じます。合掌

 

 

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