明日の「七夕(たなばた)」は、7月7日に行なう星祭りです。この日は、一年に一度だけ「織姫(おりひめ)」と「彦星(ひこぼし)」が天の川の上でデートをする日といわれ、この日にちなんで、願い事を書いた短冊を笹の葉につるし、織姫星に技芸の上達を願います。この物語の概略はこうです。結婚して仲むつまじく暮らしていた二人が、楽しさのあまり怠け者となってしまい、織姫の父である「天の神」の怒りを買って会えなくなってしましました。しかし年に1度会うことを許された二人は、七夕を楽しみに、日々仕事に精を出すようになったという話であります。
幼い頃は可哀相な二人だと同情してましたが、最近、年を重ねる事に、この逸話は真理だと思うようになりました。それは人間、これくらいの距離感が良好なのではないかと(笑)。私が日頃心がけているのは「腹六部(はらろくぶ)」という精神です。食事や睡眠、娯楽や人付き合いも、満足の一歩手前を心がけています。僧侶ですと、そのお家の悩み等々、洗いざらいのことが見えてきます。守秘義務ですので、詳細は口が裂けても言いませんが、だいたいのトラブルは「人の距離感」です。特にプライベートの髄まで知り合っている関係は、何かのボタンの掛け違いが起きた時は悲惨な状況になります。やはり何事も「腹六部」程度が丁度ではないかと思うのです。
「三猿(さんえん)」はご存じでしょうか?日光東照宮に目と耳と口を隠しているユーモラスな猿の彫刻があるのですが、これは「見ざる(猿)、言わざる(猿)、聞かざる(猿)」を現します。その意味は、他人の嫌なところは見ない、そして自分の嫌なところも見せない、他人の悪口、軽口は言わない、それから、そういうことは聞かないようにするという「人生訓」であります。たとえ親、夫婦、兄弟、恋人同士という親しい間柄でも、自分以外の人間と付き合うことが時には「三猿」を心がけることによって、自然と「腹六部」の精神に繋がっていくことと存じます。
そういった意味で、織姫と彦星は、いつまでも新鮮な、良い関係いられるのかなぁ…さすが神様のお計らい!と感じます(笑)。合掌