「大雪(たいせつ)」です。山は雪で覆われて北風が吹き、本格的な冬の到来を意味します。北国や日本海では根雪になるほどの大雪が降り、動物たちは冬眠の時期を迎えますが、仏教では恰好の修行時期となります。
奉職寺院では「仏名会(ぶつみょうえ)」が行われてます。別名「三千礼拝(さんぜんらいはい)」とも言い、文字通り3000回の礼拝をします。南無阿弥陀仏を唱え、立って座って五体を投げ出し、1年の罪を拭うのです。12月8日のお釈迦様の悟り日にあわせ、3日間(12月6,7,8日)で行いますので、毎年、この「大雪」の頃が修行期間となります。浄土宗内でも最も厳しい行だと言われます。
私はここ数年、3000回の満行ができてません。というのも、寺の修行が長くなった為、世話係に回ったからです。布団の手配、食事の準備、風呂の支度、僧侶と奉仕団とのパイプ役等々…地味ですが、大切な仕事を仰せつかりました。修行とは真逆の立場です。礼拝をしている時は、とにかく満行に向かって突き進みます。自らの「進歩」を目指して懸命になります。一方、世話係は、礼拝がスムーズにいくよう、我を押さえ「調和」を図ります。そこには「進歩と調和」の世界があります。一つの目的に向かって、この二大原則がバチッとはまった時、大歓喜が起きるのだと世話係をして学びました。これは、世の中のいかなる場面でも当てはめられるのではないでしょうか。これを意識すれば、皆が尊く見えてきます。奢り高ぶることが無くなります。
奉職寺院の住職はいつも仰います。「仏名会は1人では満行できない。皆の力が一つになり、仏の導きがあって成し得るのだ」と。私も自らの立場を全うできるように、あと1日精進します。「大雪」という暦通り、北風が強まってきました。修行者は寒い思いをしてると思います。『北風と太陽』というイソップ寓話がありますが、心地よいあたたかさで、受者の方々を調和できればと思います。合掌