現代の五重塔

お彼岸にあたり、ご先祖さまを「塔婆回向」で偲ばれいるご寺院も多いと存じます。お寺に縁のある方は、「塔婆(とうば)」という言葉になじみがあると思いますが、いわれまでは 知らない方が多いのではないでしょうか。

塔婆の語源は、お釈迦さまのお墓を意味する「ストゥーパ」が語源となります。そのストゥーパを、仏教が中国に伝わったとき支那人は「卒塔婆(そとうば)」と書き表し、それが省略されて「塔婆(とうば)」になり、さらに省略されて「塔(とう)」になりました。つまり 塔婆 というのは 塔 を意味します。塔で有名なのは「五重の塔」。五重塔の天辺にある金属製の飾り や 塔婆の上部の刻み は、ストゥーパの形が名残りとして表されてます。当初 ストゥーパは、お釈迦さまを初めとする高僧方のお墓に用いられました。そこで我々も、塔の建立までは叶いませんが、ストゥーパの形をした板(塔婆)を供え、ご先祖さまの追善供養にしようというのが、塔婆回向のはじまりです。

あまり知られていませんが、高さ634メートルの「東京スカイツリー」は、五重塔の構造が取り入れられています。「心柱(しんばしら)」という 塔の中心を貫く柱が、振り子の役割をし 免震するのです。世界最古の木造建築である法隆寺五重塔は、1300年もの間、この「心柱」の構造建築により、一度も倒壊することなく現在に至っています。世界に誇る スカイツリーが、遠い昔からの日本人の智恵や思いをを受け継ぎながら、日本の ものづくりの最高の技術を結集していることは、感慨深いものがあります。

また、スカイツリーが建つ 東京の下町界隈は、幕末の安政大地震、大正の関東大震災、昭和の東京大空襲などで、多くの尊い命が犠牲になった所です。そして、まさに建設中に起こったのが、平成の東日本大震災です。そう言った意味で、あの大地震を乗り越え 無事に建立されたのは、大きな見えない力による導きだと思わざるを得ません。スカイツリーをを監修された 澄川喜一氏は「この塔は、鎮魂と日本の未来への祈りだ」と仰ってます。

スカイツリーは  ”現代の五重塔” 。その姿を重ね合わせ、今まで この国を支えて下さった方々への報恩感謝、また日本の更なる発展安穏を願われる方が ひとりでも増えればと思います。これもある意味、宗教を越えた「塔婆回向」になるのではないでしょうか。合掌

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