「もらう」ことの尊さ

新年度になりました。読者も様々な環境になっておられることと存じます。ご自愛下さいませ。年度末、アルス・シムラの生徒さんから袈裟(けさ)の布施がありました。ご存じ、アルス・シムラは人間国宝・志村ふくみ師と志村洋子先生が開講する染織の芸術学院です。ちょうど奉職寺院が志村家の菩提寺となりますので、新年度の研修で 全生徒が参拝されるのです。その際、ふくみ先生と同郷(近江八幡)ということで、いつも私が案内させてもらいます。昨年の案内時、北陸出身の生徒さんから 私の着けていた ” 袈裟 ” について質問がありました。次のように答えた記憶があります。

「昔、インドでお釈迦さまが説法を行っておられた頃のこと。お坊さまたちは、仏教を人々に説いて廻っていました。当時、自分で生産活動を行ってはいないお坊さまは、衣食を人々の施しによってまかなっていました。ある日、いつものように説法をして各家々を廻っていたときのこと。ある貧しい家で、「たいへんよいお話を聞き、生きる希望が湧いてきました。しかし ご覧の通り、私の家は貧乏で、お坊さまにあげる物は何一つありません。差し上げられる物といえば、赤ん坊のおしめに使っているこの布ぐらいです。このような物でもよければ・・・」お坊さまは ありがたく、汚れて黄色くなっている布をもらいました。そして その布を寄せ集め、つぎはぎして衣を作って着たのです。これが「袈裟」の起源と云われます。それを証拠に、袈裟の基本色は黄土色で、小さな布をつぎはぎした模様でできているのです。また袈裟の名称は「カーシャ(汚れた布)」からきています。最後に・・・お坊様に施しをすることを布施(ふせ)と言いますよね。漢字にすると「布を施す」と書きます・・・わかりますか? そう、この逸話が「布施」の起源なんです・・・誠心誠意、おしめ(布)を差し出した … ここから、心を込めてお坊さまに施しをすることを ” 布施 ” と云うのです」

この話を聞いた生徒さんが、「卒業時に袈裟を布施させて下さい!」とおっしゃいました。それが卒業前日に実現したのです。奉職寺院にはお釈迦さまが祀られいます。その前を2年間、手を合わせてから 近くの工房へ通い詰められた生徒さん達が、袈裟を奉納されたのです。これこそが ” 真の布施 ” だと思いました。

仏縁に感謝!

仏縁に感謝!

袈裟の模様は 田んぼのあぜ道をあらわします。五穀が生ずるが如く、布施の功徳が花咲くよう、着けさせてもらいます。

袈裟の模様は 田んぼのあぜ道をあらわします。    一コマ一コマに各生徒さんの努力の結晶が詰め    込まれています。五穀が生ずるが如く、布施の    功徳が花咲くよう、着けさせてもらいます。

最後に田中信生氏の言葉をご紹介して、今回のブログを閉じます。
実は、与えるために「もらう」という気持ちが必要です。どんなにたくさん持っていても、与えつづければいつかはなくなります。親切にして「あげる」というのでは、いつかエネルギーがなくなってしまいます。親切をさせて「もらう」、掃除をさせて「もらう」と どんどんエネルギーが増えていき、疲れることがありません。(『そのままのあなたが素晴らしい』 ダイヤモンド社)

「~してあげる」ではなく、物事に「もらう」という気持ちを付けると 喜びが無限に膨らむのではないでしょうか。「何事も、させて” もらう ” 」。この気持ちが ” 布施 ” につながります。平成28年度ご卒業の7名の皆様、ありがとうございました。大切に功徳を積ましてもらいます。新年度からの 益々のご活躍を祈念いたします。合掌

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