快楽の踏み車

今朝、法事に向かっていましたら、冷え込みをものともせず、朝からパチンコに並ぶ人たちの姿を見かけました。早朝から様々な思惑・欲・情熱を抱える行列に出会い、人それぞれ 労力やエネルギーの使い方が違うんだなぁ・・・と思いました。

最近、わが国では 成長戦略の一環として「カジノ構想」が持ち上がってます。それは 外国人観光客を誘致、富裕層の落金、また地域の活性化等、様々なメリットがあげられるようです。一晩で大金をつかめるとあれば 夢のような話ですが、以前、某製紙会社の前会長がカジノに溺れ、連結子会社から約100億ものお金を引き出した事件を見ると、ギャンブルがいかに人間の知性や理性を狂わせるかが分かります。東京に2カ所、大阪に1カ所設置すれば、年間9000億円位の収益があるとの試算があるようですが、この国が乱れないように、合法化の可否は 慎重に見極めていただきたいものです。

不思議なことに、人間は「お金=幸福」とは なり得ません。日本のGDP(国内総生産)は50年で7倍になりましたが、生活満足度は全く変わってないという調査結果がでています。心理学者は、これを「快楽の踏み車(かいらくのふみぐるま)」という言葉で説明しています。「経済など状況がどんなに変わっても、人間はその状況に慣れてしまし、願望を引き上げ、もっともっととさらなる満足を求める」という説です。永遠に満たされることのない欲望とのイタチゴッコを人類は繰り返しているだけかもしれません。

「世界一しあわせな国」とも言われるブータン王国は、仏教の考えに基づき国作りをなされてます。第4代国王は、国家の問題が経済成長だけに特化されることを心配し、優先するべきはGDPではなくGNH(国民総幸福量)であると提唱されました。つまり「お金=幸福」ではないことを、徹底的に追求された国と言えます。国柄の違いがありますので、日本には適用しにくい面はあると思います。しかし「幸福とは感じ方」です。国に誇りを持つことができれば、自然とGNHは上がることと存じます。

今回は「快楽の踏み車」という話をしましたが、いくら真面目な日本人でも、国が積極的に賭博場を助長すると、それが国の基となってしまいます。ギャンブルは 勤労意欲やモラルが低下する可能性があり、さらには幸福度も上がることはありません。これでは先人がせっかく築いてきた勤勉な文化も衰退してしまいます。オリンピック招致で、これから国のあり方が積極的に語られるようになりますが、今こそ より高度で 豊かな文化を目指す時期ではないでしょうか。合掌

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